カットするまで

2022年07月18日

美容院に行かなくては。

カットを予約してあるけれども

シャンプーだけでも

いいかなあ鏡に向かって自問自答。

明日のお出かけにそなえて、

できるだけ少しでもきれいにするのだ。

シャンプーだけでいいかなあ、

身支度をして家を出ると

隣家のノウゼンカズラがまぶしいオレンジを放っている。

扉を開けると美容院の冷気がつつむ。

手の消毒と検温をすませ

シャンプー台にいって二度洗いしてもらって、

こんどは鏡のまえにいってドライヤーで乾かしてもらう。

鏡にうつるじぶんの姿、しだいに形をなしていく髪、

そのとき異変に気づいた。

やっぱり不恰好。

一ヶ月ぐらいしか経っていないから大丈夫と思っていたけれども、

やっぱりちょっと形が崩れている。

そんなにひどく、というわけではない。

すでにブローは終わり、ほかのお客さんも入っている。

我慢しよう、

と思って美容室をあとにする。

ちぇ。どこかでわたしは舌打ちをしている。

明日はお出かけなのに。

家に着いて、お気に入りの音楽をかけて気をまぎらわそうとする。

でも、なにかもやもやしたものを抱えている。

わたしはこう思いこもうとした、じぶんには見えないんだし、そうひどいわけではないし。

タオルケットにくるまる。

でも、せっかくのお出かけじゃないか。パソコンをひらくと、

天ぷら屋さんから明日の予約確認のメールが入っていた、そしてわたしは思い出したのだった、

どんなに楽しみにしていた予定だったかを。

カウンターの席にすわり、

板前さんとよもやま話をしつつ、お好みのものを注文し目の前で揚げてもらう。

じゅわっと口のなかで溶ける風味と、さくさくでふわふわの衣の舌触り。

やっぱりこんな格好じゃいやだ!

わたしは決意した。

もう一度、美容院に電話すると、店長の奥さんが出た。

予約は空いているから、来てください、という。

わたしは四時に予約を入れて、これで良かったんだ、と心からおもった。

我慢することもときには大切かもしれないけれど、言わなければ伝わらないことって多いんじゃないか。

カットしてくれた店長は

さっき店を出ていくとき元気がないと思っていた、という。

知っていたんだ、わたしの気持ち。

このあたりをもう少し軽くしてください、と頭のあたりを手で示してみせると、

嫌な顔ひとつせずリクエストに応えてくれた。

帰りに隣家のノウゼンカズラは、やっぱりまぶしい色を放っていた。

あんまりきれいに咲いているから、ことわって、写真を撮らせてもらった。

明日はお出かけ。