便り

2022年10月20日

とても落ちこんでいた日、

秋晴れというのに気分がふさぎこんで

亀の世話を母に頼んでしまった。

庭で、母が水換えをしているあいだわたしは

そばに群れていたイヌタデを撮ったが

上手く撮れない。

秋明菊がもう咲いたかしらね、との母の言葉に

二、三日前まるい蕾が今にも咲きそうだったのを思い出し

ちょうど咲いている頃だと

イヌタデを放ったらかしにして庭の裏手にまわる。

行ってみると、

ふくよかで優しげな花が一輪だけ

やわらかな面差しを向けていた。

それから外出した。

秋明菊のおかげで出かける気分になった。

明日はみじかい旅行から父が戻る、

肉を買ってきて、たれを手作りしてしゃぶしゃぶ膳にしよう。

スーパーへ向かう途中、

知り合いかなと思ったひとがいたのでお辞儀する、

すると駅はどちらかと訊かれたので

一つ目の信号を右に曲がってくださいと、わかりやすい道をおしえる。

わかりにくい道でよければ

クルマのあまり通らないところを行くこともできるが。

やや年配の優しそうなおじさんだった、

お礼をいって去っていった、スーパーへ向かう。

行ってみると、三つ葉がすごく安かったので二つも買った、

お吸い物にしよう、舞茸も買って。

だっていつもの半額以下の値段だった、こんなことは滅多にない。

帰り道、まだ学生らしい男の子とぶつかりそうになった、

角のところで。

でも、ぶじに帰宅。

きょうは世話できなくてごめんね、

すっかり機嫌の直ったわたしは調子よく亀に話しかける。

亀はちょっとむくれて、それを聞いている。

自室でメールを開けていると

あいかわらず私信は待てども来ないが、

このあいだの寄付のお礼のメッセージが来ていた。

送ったカップ麺がちゃんと困っているひとのところに配られたということだった、

そのていねいな文章に思わずこころが和む。

気がついてみると、

言葉や贈り物、さまざまな気遣いをわたしは受けとっていた。

秋明菊だって母の苦心があってはじめて

嵐で倒れそうになりながらも、土盛りをしてもらったりして咲いたものだ。

わたしは感じないわけにいかなかった、じぶんはすごく幸せだと。