桃の節句

2022年03月02日

和菓子を買う、と、決めていた。

いい天気、出かけるのにはうってつけ、

暖かくなってきたし。

ほとんど自己流だけど帰ってきたら

お抹茶をたてて母といっしょに味わおう。

電車に乗ること一駅、

風景の流れゆくのが気持ちいい。

降りて歩き出し、

角のところの甘味処を兼ねた和菓子屋さんへ、

といっても今日は買うだけ。

牡丹の上生菓子が目にとまるが、ひとつしか残っていない。

下萌という名の

土に生えいずる草をあしらった和菓子が美味しそうだ、

上に緑色をのせた雪に見立てた白い生地を、黒いつぶあんが下から包んでいる。

わたしの前に年配の紳士がお会計をしていたので、

待っていると、

店長らしき職人さんが、何にしますか、と、声をかけてきた、

牡丹はひとつだけですか、ときくと、そうなんですよ、と答えが返ってきたのでそれで、

下萌を五つ、とたのむと包んでくれた。

帰りはバスだ、

駅前から始発のバスに座ってゆったり行くのが楽しい。

そういえば、もうすぐ桃の節句だ。

電車を降りた改札のところに師範による生け花が飾ってあったっけ。

ややオーソドックスに桃の花と菜の花。

桃はまだつぼみでこれから咲くのが楽しみだ、

菜の花が愛らしく下に萌えている。

わたしも真似をしてお花屋さんに寄って桃の節句でもお祝いしようか。

女の子たちが健やかに成長するようにと、そんな願いをこめて。

ときには下萌のようにたくましく、

桃の花のように華やいで。

男の思うままになるのでなく親の思うままでもなく、

じぶんの意思をもち、その意思でもって、なるべく多くの人と心を通わせられるように。

和やかなお茶会になりますように。