欲望の階段

2022年04月08日

なぜ人の欲望は限りないのか。

欲しいものがある。

宝石には人をとらえて放さないちからがあると思う、

わたしはヒスイがふたつ欲しい、

ひとつは黒っぽく深緑色をしたそれで、

もうひとつは白にあざやかな緑のにじんだそれだ。

原石の形を生かしたペンダントがいい。

でも、なかなか大きさや形が理想的なものにめぐりあわない。

ヒスイを探すあいだに他のペンダントにめぐりあうのだけれど、またそれを手に入れるけれど、

ふたつのヒスイを希求してやまない。

ひとつの欲望が満たされると

こんどは別の欲望が生じるものらしい、少ないもので満足できる人こそがほんとうに幸せな人ではないか。

ヒスイをふたつとも手に入れたら、わたしは深く満足するだろうと思う、でも、

果たしてその満足は長続きするだろうか。

こんどは別の石が欲しくなるのではないだろうか。

不安とおそれから逃れるために

宝石にたよって

ほんとうに欲しいものは

愛おしいかたわれが手の届くところにいてくれること。

いつか失くすのではというおそれから

さまざまなもので気を紛らわす、美味しいココア、珍しい石、ユーモアを交えたやりとり。

ほんとうは不安なのに。

文明はわたしたちを豊かにしてくれたけれど、

その不安まではぬぐってくれない。

愛しいひとよ、なにかたわいもない話をしたいんだ。

明日の朝おきたらいつもの調子で、おはようの挨拶をしてくれる?

そうして、いっしょにちょっときらきらしたものを買いに街へといこうよ。