空は荒れ模様だけど

2023年04月07日

二階の窓から

木々が揺れるのを見る、

強い風にあおられて。

豊かな新緑をたたえたこずえが

風に揺さぶられては

お辞儀をするかに見えて、また跳ね上がる。

こういう日には

出かける気もしない。

鏡を見る。

ショートカットなので伸びるのが早い。

もうすぐ旅行なのに、

こんな崩れかけた形では気分が台無しになってしまう、

わたしは急いで美容院に電話した。

ちょうど今日、

空いているという。

ラッキーだ、予約を入れてもらう、それからちょっと早いが出かける。

雨はいま降っていないみたいだ。

空は相変わらずどんよりと垂れこめているけれど、

ソメイヨシノは散ってしまったけれど、

八重桜が咲いている。

公園では子どもたちが遊んでいる。

隣りの神社の石段にひとりでぽつんとしゃがんでいる子がいたので近づいて、

こんにちはと言ったら挨拶を返してくれ、

わたしが通る邪魔になると思ったらしくそこをどいた。

座っていていいのに、わたしは言い、

時計を見るとまだ早かったが、美容院へ。

荒れ模様の日でも

店の明かりはあたたかだ。

中に入ると

心地良さにつつまれる。

いつも担当してくれる店長のこざっぱりと整った身なりと笑顔に

いつものごとく自然と冗舌になる。

店長はジャズはピアノトリオが好きだという、

わたしはあまり本格的なものは苦手で、

ヴォーカルなどが入った、ちょっとアコースティックなジャズめいたものが好きなのだと告げる。

店長はいまはCDはほとんど買わないという、

わたしはオーディオでCDをかけるのが好きでよく買うという、

ダウンロードして聴いて良かったから、

CDも欲しいと思うのだけれど、

最近はアーティストさんがなかなかCDを出してくれなくて、とも。

カットしてもらって

鏡のなかのじぶんが好きになる。

お礼をいって店を出ると

ちょうど犬を連れた近所の奧さんに出会った。

汚れますよ、というが、構いません、とこたえしゃがんで目線を合わせ手を差しだすと

やわらかでおおらかな鼻づらを近づけてちょっと舐めてくれる。

家に帰って

二階の窓から外を眺めると

やはり荒れ模様で

こずえが風を受けてお辞儀をしたかと思うと、また跳ね上がる。

たとえ逆風が吹いても

じぶんの人生を豊かにしてくれるものたち、たとえば、

公園で遊ぶ子どもたちや、美容院、道ですれちがう犬などそういったものを大切にしていきたい。

だいじょうぶ、わたしには

大好きなものたちがいるのだから。

いつか貴方とどこかで出会いたいような気がする、人生は長いのだから、

巡りあう可能性はゼロパーセントではないはずでしょう?