萩の花

2023年09月15日

まだ陽射しはつよい、

風鈴があずま屋の木陰に細やかに鳴り

萩の花を撮り

気になった被写体に片っ端からカメラを向け

ちょっと池のほとりで、ひと休み。

撮った画像のチェックをしようと思っていたら

いっぴきのトンボが水面を跳ねるように。

トンボはやがて去っていき

わたしはとなりにすわっていた男の方と話をする、

ひとりですか、というと、あっちに連れがいますというので、

わたしはいつも独りで写真とってます、

とつとめて明るく。

そこを後にするとこんどは女性の方に声をかけられた、

草連玉と立て札があるのに

なにも咲いていないけれども、これはガマですよねえ? と、水辺の穂を指して。

まだ咲いていないんじゃないですかね、黄色い花をつけますよ、

といって別れて

こんどは風鈴の鳴るあずま屋で、ひと休み。

さっきの女の人もこちらへ歩いてくるところだった、

これはなんでしたっけ、という。

名前がわかる植物で良かった、と内心ひやひやしながら名前をおしえるが、

じつはそのひとのほうが花に詳しかった。

わたしが、ホトトギスがもう咲いている! と声をあげると、

これは台湾ホトトギスですから。上のほうにしか花が咲いていないでしょう? と答えが返る。

さきほどの池には

一羽のカルガモが中州にいて水を飲んでいた。

黄色いオミナエシの花には

ヒョウモンチョウが舞いあそびモデルになってくれる。

こぼれるように咲く萩の花では小さな丸っこい蜂たちがせっせと花粉をあつめている。

無数の生き物たちとの出会い、一期一会の人との出会い、楽しかった。

門をくぐると、

これから見学に来るサングラスの女性が。

四時半までですから急いだ方がいいですよ、と、そそっかしいわたしはそう言ってから、表札で

五時までとあるのに気づいてあわてて訂正する。

楽しんでいらしてください。

わたしは携帯でタクシーを呼んで待つ。

ヒヨドリが、

枝の先にとまって待つ間の時間をともにしてくれる。

また来よう、寂しくなったらいつでも。

いつの頃からか歳をとるにつれ

知らないひとと言葉を交わすのが習慣になっていった。お天気のこととか

その土地のこととか、そんな話題だけれども。

寂しくない、独りきりで生きている人間なんていないのだから。